『螢』

螢 (幻冬舎文庫)

 ミステリーの作品を評する言葉として、「ラスト数ページの驚天動地の展開」とか、「今まで自分の見ていた世界がガラガラと音を立てて崩れ落ちるような」みたいな決まり文句があります。麻耶さんの『翼ある闇』『夏と冬の奏鳴曲』なども、まさにこういった評価を受けてきた作品です。

 そして本作では、「ラスト数ページの崩壊」がこの上なく直球な形で描かれています。なんていうか、登場人物たちの目に映っていた「ファイアフライ館」という舞台全て、それどころかまさに彼らの立っていた地盤までもが跡形もなく崩れた感じ。

 『翼ある闇』や『夏と冬の奏鳴曲』で動じなかった人も、この作品の「崩壊」を「崩壊」と認めないわけにはいかないでしょう。いえもう本当、これが崩壊でなくして何が崩壊なのかという、一切の異論を許さない紛う方なき崩壊なのです。

 ああ、あと作中で主人公が何度も「自分はRPGの勇者になりたい」みたいなことを言ってましたけど、とすればあのラストは、「エンディングで崩壊する魔王の城」とも掛けた、ひどく高度なギャグなんではないかと思いました。(Dr.ワイリーの基地でも可) もうどこまでも崩壊尽くし。

 それにしても、読んだ人には分かる今回の自分の感想の適当さに[これはひどい]タグでもつけたい気分になりました。ひー。