『スカイ・イクリプス』

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

スカイ・クロラ』シリーズ外伝。「キルドレでない人物の視点」をも交えて語られる、外伝ならではの異質な短編集。

 と言いつつ、実はあまり異質すぎる感じがしなかったのが面白いところ。本作の不思議な空気感は"永遠の子供"であるキルドレの精神形態によるものだというのが、これまでの認識でした。でも、キルドレでない"ただの人間"が視点人物となる本巻のいくつかの短編でも、ある種の空気感は依然として共通しているのです。

 この感覚は、短編「Nine Lives」が最も顕著です。本作の語り手は明らかにキルドレではないのですが、シリーズの主人公たちと同じく飛行機乗りです。そして非キルドレの飛行機乗りである彼の感覚は、キルドレの飛行機乗りたちと同じく、やはり鮮烈な印象を残していきました。("大人"と"キルドレ"の対比で際だつところも勿論あるのですが)そういうところを見ると、本作シリーズはキルドレである前にまず"飛行機乗り"である子供たちの姿を描いた作品だったんだなあと思います。