『ボトルネック』

ボトルネック (新潮文庫)

「人生は罰ゲームです」なんてフレーズがありますが、これはまさにそういうお話。読んでいて歯軋りしたくなる小説です。

 ほとんど何の疑問も抱かず「タイムループもの小説」のひとつとして読んでいたのですが、よく考えたらこれ、別に時間移動なんて一切してなくて、あくまで平行世界間を移動しただけなんですね。ただし「ありえたかもしれない可能世界を垣間見ている」点で、どちらも同じテーマを扱うことのできる作品形式なのだとは思います。

 本作は"理想的な可能世界を垣間見てしまったことによって、理想の対極にある主人公が絶望に陥る"お話です。ところでそういえば、『うみねこのなく頃に』のエピソード7はこのテーマのちょうど真逆の内容になっていて、"不幸のどん底にいる人間が、可能世界に存在する理想的な自分の姿に最後の希望を見出す"お話なんですよね。可能世界にいるのが本人か別の誰かかという違いだけで、ここまで真逆の物語になるというのは、なかなか興味深い対比ではあります。うみねこの平行世界の書き方から無邪気な希望を見出していた私は、なんか打ちひしがれた気分になりましたが……。